山岳信仰・修行場
白瀧さんの信仰は地元の人々や訪れた人々による、とても緩やかな信仰によって成り立っています。
それは白瀧さんのあるこの伊勢志摩地方がたいへん温暖で穏やかな気候風土であることや、山岳信仰といっても日本の他の地方の山岳信仰にあるような厳しい自然環境への畏怖によるものとは若干、その成り立ちが異なっていることも関係しています。
海の幸や、山の幸が豊かなこの地方では、古くから主に五穀豊穣が祈念されています。
系統としては、日本神話のイザナミとイザナギの間に生まれた神様、大山津見神(オオヤマツミ)への信仰と自然崇拝が統合された系統のようです。
「津(ツ)」は助詞「の」にあたります。
「見(ミ)」は神様のことです。
つまり、オオヤマツミ信仰とは「大いなる山の神」への信仰を意味します。またオオヤマツミには別名があり、和多志大神(ワタシノオオカミ)とも呼ばれるのですが、こちらの「和多(ワタ)」とは海を意味し、伊勢志摩地方によく見られるように、山と海を司る神様への緩やかな信仰ということになります。
ちなみに「重(エ)」とは「座っている、いらっしゃる」という意味で、三重県の名前の由来は「神様がご鎮座していらっしゃる場所」というところから来ています。
この辺りに見られる山岳信仰は、修験者のように厳しい修行をしていたというよりは、幸福を願ったり、神に祈ったり、奉仕するために心身を清める、という意味合いでの修行が多かったようです。
白瀧さんにある弘法岩をはじめ、行者大岩など、ところどころに座るのに適した場所が点在し、古くから祈りや瞑想に使われていたようです。